円形脱毛症の治し方 再発、原因など知りたい情報まとめ

10円ハゲに気づいたネコ

円形脱毛症というと、少しハゲができるだけで1年もかからないうちに自然に治るというイメージを持っている方もいれば、スキンヘッドのように髪が全て抜け落ちてしまうイメージを持っている方もいらっしゃると思います。

真逆のイメージですが、実はどちらも正しいのです。

症状が軽い場合は自然治癒しやすいですが、重症になってしまうと治せないこともある怖い病気です。

残念ながら現在の医学では円形脱毛症については研究段階にあり、分かっていないことも多くあります。長年治らない患者さんは何とかしたいと様々な情報を求めているのが現状です。

そこで日本皮膚科学会では『円形脱毛症診療ガイドライン2010』を作成して、もっとも標準的かつ最善の治療法を全国の皮膚科医に提示しています。

 

この記事では、日本皮膚科学会が推奨する効果的な治療法の他、円形脱毛症の症状、原因、発症メカニズム、HARG療法、自毛植毛、メディカルSMPといった難治の円形脱毛症の方向けの治療法まで紹介します。また、AGAの専門医が円形脱毛症の患者さんに推薦していた複数の専門医療機関についても記載しています。

 

症状 合併症 メンタルケア

円形脱毛症は、自覚症状や前駆症状(前ぶれとなる異変)がないまま、突然脱毛が起きます。

気付いた時には、楕円形や斑状のいわゆる10円ハゲができています。

人によっては軽い痒みや違和感を感じることはあるようですが、それが円形脱毛症が始まる前兆だと気づくことはまずありません。鏡を見て、突然できていた10円ハゲに驚いたという人がほとんどです。

多くの場合は10~500円くらいのハゲが1~数箇所できます。1箇所だけ10円はげになることを単発型、2箇所以上10円はげができることを多発型と言います。どちらも軽症に分類されます。

病院では脱毛面積が頭部の25~50%程度以上あると重症と判断されます。

重症の場合は、綺麗なスキンヘッドのように髪の毛がほとんど抜け落ちてしまうこともあります。脱毛が頭部のほぼ全域に及んだ場合は全頭型と言います。また、頭部の脱毛面積が非常に大きくなるだけではなく、眉毛、まつ毛、髭などを含めた全身のあらゆる毛の脱毛が起こることがあります。全身の毛が抜ける場合は汎発型に分類されます。重症化してしまうのは10人に1人くらいで、比較的女性に多いです。

稀に頭髪の生え際が帯状に抜ける症状(蛇行型と言います)もあり、この場合は治癒しにくいです。

他の症状としては、脱毛症状と同時に爪に小さな点状のくぼみができることもあります。

1度発症すると、再発することも多い病気です。治癒後5年以内に約40%が再発すると言われています。

 

円形脱毛症は後天性脱毛症の中で一番頻度の高い疾患で、患者は人口の0.1~0.2%と推測されています。1000人に1~2人くらいですね。

一生のうちで自分が円形脱毛症になる確率は2%程度と言われていますので、80代のお年寄りの50人に1人は円形脱毛症になった経験があることになります。

人種・性別・年齢は関係なく発症しますが、患者のうち1/3が15歳以下で比較的若い人に多いのが特徴です。

歴史的には約2000年前からこの症状があったことが分かっています。

 

合併症

アトピー性疾患は20%以上、橋本病などの甲状腺疾患、尋常性白斑は数%の確率で合併が起こります。

アトピーとの合併は子供に特に多く、アトピーと合併していると重症化する可能性も高くなるので注意が必要です。特にフィラグリン遺伝子異常を持つアトピー性皮膚炎の人は重篤な円形脱毛症を合併する確率が高いとされています。

円形脱毛症だけなら患部に赤みや炎症などはないので、患部が赤い時は他の病気が原因だったり合併している可能性があります。

 

メンタルケア

人によって症状や悩みの大きさに差があるのが円形脱毛症です。軽症ならば10円ハゲが1つ2つできて半年後には自然治癒しているということが多いので、精神的なダメージは短期間だけで終わります。

しかし重症の場合は、頭がつるつるになってしまったり、まゆ毛まで全て抜けてしまったりと見た目の印象が大きく変わってしまいます。難治になると長期間に渡り精神的に大きなダメージを受けます。

他人の視線が非常に気になるし、鏡を見るのが辛い、生きるのが辛い、死にたいとまで思う人も多いです。女性の場合は特に落ち込みやすいと思います。

お子さんの場合は周りの子供たちからハゲをネタにキツイいじられ方をすることもあります。それがPTSDのように大人になっても引きずるようなトラウマになることもあります。

そのため特にメンタルのケアには気を配る必要があります。本人はもちろんのこと、周りの人たちの考え方やサポートが重要になります。

重症の円形脱毛症の患者さんにとっては、髪が抜け落ちる症状そのものの肉体的ダメージよりも精神的ダメージの方が深刻です。皮膚科医にもそれは治せませんので、本人の感情コントロールや考え方、価値観が重要になります。ネガティブな視点だけしか見えずのめり込んでしまうと鬱病になる可能性も十分にありますので、必要であれば精神科の助けも借りましょう。

悩み過ぎて、シャンプーなどで刺激を与えると残っている毛髪まですぐに抜けてしまうのではないかと心配になって洗髪を怖がってしまう患者さんもよくいます。

頭皮を清潔にしないと他の脱毛症を引き起こすリスクを高めてしまうだけなので、きちんと正しい洗髪をしましょう。

 

原因 メカニズム

原因は、様々な説が予想されておりはっきりとしたことは分かっていません。

近年では毛包組織に対する自己免疫疾患という説が有力になっています。

疲労や感染症などが心身にストレスを与えると、それをトリガー(きっかけ)にして自己免疫反応が誘発され、Tリンパ球が本来問題ないはずの毛包組織を攻撃し、攻撃を受けた毛髪だけがごっそり抜け落ちるという説です。

しかし、それだけが要因となっていると確証しているわけではありません。

ストレスがトリガーになっているかについては関連性があったとする報告と全くなかったとする報告があり、明確に証明されるには至っていません(コントラバーシャル)。

インフルエンザなどの高熱が出るウイルスの感染や疲労などもトリガーになると言われていますが、医学的にはまだ仮定の話です。

現在では原因の特定は研究段階にあるので、様々な説が唱えられている状況です。

近年の大規模調査によると、多因子遺伝性疾患であることも指摘されており、一親等内での円形脱毛症の発症率は一般に比べて10倍高いと報告されています。また、一卵性双生児の円形脱毛症の一致率は55%と高いですが、二卵性双生児の場合は0%です。

最近のイギリスの研究者の報告では、6番目と21番目の染色体上の遺伝子が円形脱毛症に関係しているとされています。

今後さらに研究が進めば遺伝的要因から治療する方法も発見される可能性があります。医学の進歩が待たれますね。

 

遺伝的要因以外に体質的に円形脱毛症を起こしやすいのは、アレルギー性疾患(花粉症、喘息、アトピー性皮膚炎など)がある人、自己免疫性疾患(膠原病など)がある人と言われています。

 

原因が明確になっていないので、現在では円形脱毛症を予防する手立てはありません。ストレスを溜めないようにするとか正しい生活習慣を意識することが予防につながるという人もいますが、その意見に医学的根拠は全くありません。逆に言えば、発病するまでは気にする必要のない病気とも言えます。 

 

治療法

アトピーなどとの合併症がなく症状が軽度の場合は、80%の患者が1年以内に自然治癒で完治します。

10円はげが1つか2つできたことに最近気付いたばかりならば、何もしなくても自然に治ることがほとんどです。発症してからしばらくすると、最初は産毛が生えてきて徐々に普通の髪に育っていきます。症状が軽く気付いたばかりなら慌てて皮膚科に駆け込む必要はないです。

重症の場合やアトピー性皮膚炎などを合併している場合は、医師による治療が必要ですので速やかに皮膚科を受診しましょう。

円形脱毛症は、脱毛面積が広かったり全身に及んでいるほど治療が難しくなります。脱毛箇所から発毛しないまま3年くらい経ってしまった場合やアトピーや自己免疫性分泌性疾患の病歴がある場合は、治癒する可能性が低くなってしまいます。

 

皮膚科での一般的な治療

多くの皮膚科では日本皮膚科学会が作成した「円形脱毛症診療ガイドライン」に基づき、ステロイド剤と局所免疫療法を用いた治療が中心となって行われます。また16歳以上の成人の場合と15歳以下の小児の場合では治療方針は異なります。また、これ以外にも様々な治療が担当医の判断で行われています。(参考リンク)日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2010

・ステロイド

ステロイド剤は医師が症状の進行度を見ながら注射をしたり、外用薬を塗ったり、内服したりという判断をします。

ステロイドの局所注射はガイドラインの中でも推奨度B(行うよう勧められる)とされており、高い発毛効果があるとする研究結果がいくつもある医学的根拠の高い治療法です。ステロイド外用薬も全ての症例に第一選択肢として使用することを推奨しています。

・局所免疫療法

ガイドラインでは推奨度B(行うよう勧められる)の治療法で、全年齢に対して治療できます。特に脱毛部位が25%以上の多発型、全頭型、頻発型には第一選択肢として行うよう推奨されています。

局所免疫療法はかぶれを引き起こす薬品を患部に塗り、弱いかぶれの皮膚炎を繰り返し起こす治療法です。1~2週間に1度くらい行います。

有効率は60%以上で効果の高い治療法です。難治な場合でも有効で、子供でも治療可能です。

ただし、中止すると再び脱毛することもあるので、同じ治療を繰り返し何年も行なう必要が出てきます。

 

いずれの治療法も副作用のリスクなどがあるため、医師の適切な判断が重要になります。

ガイドラインでは行うべきではない治療法も記載されており、漢方薬の内服、催眠療法、鍼灸治療などについて医学的根拠がなく推奨できないとされています。

 

臨床データ

全患者中、34%~50%は1年以内に毛髪が回復しますが、15%~25%は全頭型(頭髪の大部分が抜ける症状)や汎発型(全身の毛が抜ける症状)へ移行し、その場合には回復率は10%以下と著しく低くなってしまいます。

17年間の経過観察報告によると、脱毛面積が50%未満の成人症例では56%が回復するが、脱毛面積が50%以上では回復率はわずか3.7%でした。

また、15歳以下で発症した場合や蛇行状脱毛症の回復率も低いです。

 

費用

症状によって治療期間は大きく変わりますし、費用も変わってきます。

10円はげひとつ程度の軽症なら、放っておけば治るので治療費はゼロ、完治までに半年もあれば十分でしょう。

重症の場合は完治しないこともあるので治療期間は最悪の場合はあきらめるまでとなります。費用もそれに比例して変わります。ステロイドや免疫療法の場合、診察代などを含めて1回数千円程度ですが、長期間になるとそれなりの金額になってしまいます。運悪くどうしても治らない場合は、どこかで見切りをつけ、かつらやウィッグをつけるなど別のアプローチを考えるのもひとつの選択肢になるかもしれません。

 

分からないことの多い病気だから知っておきたいこと

原因が明確になっていない病気ですので予想外のことが起こることもあります。

治癒しないまま何年も経過してしまっていても、時として突然髪の毛が生えてくることがあります。毛包の基となる幹細胞は生きていますのでそこに何らかの作用が働き突然回復すると考えられていますが、想像の域を出ず詳しいことは分かっていません。

 

分からない病気だから、少々混乱してしまう人もいます。

どんな病気でも必ずうつるものだと思い込んでいる人、どんな病気でも食べ物で治ると思っている人、髪の悩みはシャンプーや育毛剤で解決できると思っている人が時々いるのですが、そういった思い込みはやめましょう。

円形脱毛症はウイルスなどが原因ではないので他人にうつることはありませんし、子供にも発症する病気なので喫煙、アルコール、コーヒーなどもほとんど関係ないです。ですからタバコをやめても禁酒しても治りません。食べ物が原因ではないのでサプリメントを飲んでも治りません。年齢・性別・人種も関係なく発症するのでシャンプーの種類も関係ないですね。円形脱毛症が治るシャンプーはありません。

分からないことの多い病気は悪徳業者が効果のない様々な商品を売りつけるチャンスです。「このサプリメントを飲んだら治った人がいますよ」「このシャンプーで発毛した人がいますよ」「このネックレスをかければ…」「あなたの生まれた星回りが…」「信心が足りないからだ。前世のカルマだ。だからこのパワーストーンを買えば…」など、人の弱みに付け込んでくる詐欺師は必ずいます。悩んでいる時こそ、詐欺には気をつけましょう。

心配であれば自己流の治療はせず、皮膚科へ行って専門医の適切な治療を受けましょう。

 

どこの病院がいいのか?

皮膚科は日本全国に多数あるので、それぞれの地方には名医がいらっしゃると思います。完治が難しいこともある病気ですが、ガイドラインにはこれまでで紹介した治療法以外にも様々な治療法が提案されています。優秀な医師と相談しながら治療に取り組んでいきましょう。

AGA専門医の佐藤明男医師は円形脱毛症で悩む患者さんに推薦医療機関として以下の病院を挙げていらっしゃいました。

お悩みの方はお近くの病院で一度診察を受けてみてはいかがでしょうか。

⇒ 東京医科大学病院皮膚科

⇒ 順天堂東京江東高齢者医療センター皮膚科

⇒ 北里大学病院皮膚科

⇒ 浜松医科大学病院皮膚科

⇒ 大阪大学皮膚科

 

ガイドラインには載っていませんが、薄毛治療の専門病院では他にも円形脱毛症に有効とされている治療法があります。

・HARG療法

HARG療法とは、頭皮に成長因子を直接注入し発毛を促す治療法です。HARG治療センターによるとAGA治療だけでなく円形脱毛症にも非常に効果があるとされています。症状によって効果は異なるはずですので、自分の場合はどの程度の効果が期待できるのかなどについてHARG療法を受けられる病院で相談してみるのもひとつの手です。

 

・自毛植毛

自毛植毛を専門にしているヨコ美クリニック今川院長によると、円形脱毛症の治療には自毛植毛は推奨はできないものの、「いろいろな治療を受けても症状が改善しなかった&状態に変化がないまま3年が経過し安定している」という条件をクリアしている場合は植毛を考慮すべきとのことです。そして結果の多くは良好だったとのことです。何年も治らないままの方は自毛植毛という選択肢もあります。

 

・メディカルSMP

2016年に日本に初めて上陸したメディカルSMPという治療法もあります。頭皮にアートメイクを施すことで脱毛部分を目立たなくさせることができます。現在のところ、日本で唯一、東京の首藤クリニックで導入されています。公式サイトには円形脱毛症の治療に有効かどうかの記載はありませんが、私が首藤クリニックに直接問い合わせたところ、「メディカルSMPは円形脱毛症に最適な治療法です」とのご回答を頂きました。検討する価値が高いと思います。

 

カウンセリングだけなら無料の薄毛外来はたくさんあります。
円形脱毛症は人によって症状が違いますし、特に難治になっている場合はこれらの治療について効果がありそうか医師に相談しに行くだけでも価値はあると思います。

 

(2016.9.29 追記)

米国コロンビア大学の研究チームがルキソリチニブという医薬品が難治の円形脱毛症に劇的な効果をもたらす可能性があると報告しました。

今後の治験の結果次第では、重症の円形脱毛症でも完治できる可能性があります。

詳しくは以下の記事を参考にしてください。

⇒ 円形脱毛症が治らない方に超朗報!! ルキソリチニブに95%以上の発毛効果!!

 

 

10円ハゲに気づいた赤ちゃん

私も軽度ですが円形脱毛症になったことがあります。参考になるかは分かりませんが、軽度ならたいていは放置しておけば自然に治ります。症状が拡大していかないなら余計な心配はせず楽観的に考えていれば良いと思います。

 管理人の円形脱毛症体験

 

 

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