AGAの症状と原因・メカニズム 医学会が認めた効果的な治療法
テレビCMなどでもよく見聞きするようになったAGAという言葉。
「詳しくは知らないけど、男のハゲのことじゃない?」というくらいの認識の方が多いのではないでしょうか。
さてここで問題です。
40代の日本人男性の何%がAGAでしょうか?
この記事では、AGAとは何か、症状、原因、治療法などについて医学的に解説していきます。
AGAとは
AGAとは、Androgenerib Alopeciaの略で、男性型脱毛症や壮年性脱毛と呼ばれます。
男性特有の生理現象と言われています。
さきほどの質問の答えですが、40代の日本人男性の約30%の人が発症することが統計上分かっています。つまり3人に1人はAGAを発症するということですね。
男性の薄毛の90%はAGAが原因だと言われているので、世間でよく見るハゲたおっさんはほとんどがAGAがです。
AGAは女性にも発症しますが、発症する確率は低いです。女性のAGAのことは、男性と区別するためにFAGA(female aga)と呼ばれています。
AGAの症状
AGAでは、額の生え際(M字部分)や頭頂部(O字部分)の毛髪が薄くなっていきます。
いわゆるM字はげ、つむじはげと呼ばれるパターンの薄毛です。
お笑い芸人さんで例えると、M型は笑福亭鶴瓶さんや所ジョージさん、O型はフットボールアワーの岩尾さんや我が家の坪倉さん、MO型はタモリさんやブラックマヨネーズの小杉さんのような感じですね。
ジャングルに来ました‼️ pic.twitter.com/MrHcB8XltS
— ブラマヨ小杉ライブ公式アカウント (@kosugilive) 2016年6月16日
一旦AGAを発症してしまうと、抜け毛が増加するのと同時に生えている1本1本の毛が細く短くなる(ミニチュア化する)ので発症した部位の髪の密度が薄くなります。「髪の毛の本数が減る+毛が細くなる」ということが同時に起こるので髪が後退し、頭皮が透け、ボリュームがなくなるのです。
AGAを発症してしまうと、多くの人が鏡を見るたびに自分の髪の毛の薄さを気にするようになります。
「生え際が上がってきた」
「つむじ部分の頭皮が透けて見えてきた」
「最近抜け毛が多くなった。髪の毛にコシがなくなった気がする。」
もっとも早い人では20歳くらいから発症し、ゆっくりと何年もかけて進行していき、徐々に薄さが目立つようになります。
20代後半以降の男性が薄毛になったと感じたら、まずはAGAを疑いましょう。
AGAの発症メカニズム
薄毛の治療というと、市販の医薬部外品の育毛剤や頭皮マッサージが良いという話をよく耳にします。
じつはそれらはAGAの治療としては全く効果がありません。医薬部外品の育毛剤や頭皮マッサージはAGAの発症メカニズムとは無関係な治療法なのです。原因の根本的な解決策になっていないので治すことができないのです。
では、AGAを治療するためにはどんな方法なら効果があるなのか? それを知る前にそもそもAGAはどんな仕組みで発症するのかを解説します。
ヘアサイクル
AGAが発症する仕組みを知るには、ヘアサイクルという「毛髪が生えてから抜けるまでの仕組み」を最初に理解しておく必要があります。
髪の毛には寿命があり、毛穴から生えてきて数年間に渡って伸び続け、自然に抜け落ち、しばらく時間を置いた後で再び同じ毛穴から新しい毛が生えてきます。
この周期をヘアサイクルと言います。毛周期とも呼ばれます。
初期成長期で新しい毛髪が生えてきた後、成長期の2~6年間で太くコシのある毛髪に成長しています。6年を経過すると毛球の収縮が始まり、退行期の2~3週間で毛球が完全に退化します。
その後、3~4ヶ月間に渡って毛球は休止期間に入り何の変化も起きません。休止期間が終わると再び新しい髪の毛を発毛させます。
人間の毛髪は、このサイクルを一生の間に約40~50回繰り返します。
40~50回のサイクルが終わると完全に細胞分裂が止まり、発毛することはなくなります。40~50回のヘアサイクルを繰り返すと細胞の寿命が尽きるいうことですね。正確に言うと毛母細胞が死ぬのですが、毛根が死んだという言い方をよくされます。
40~50回という回数が決まっているのは、細胞分裂の回数券とも呼ばれるテロメアの働きによるものです。
毛髪の成長
毛髪は毛包の一番深くにある毛球で成長期に作られます。
休止期が終わると毛乳頭細胞が毛母細胞に成長期を開始するシグナルを送り、シグナルを受け取った毛母細胞が毛細血管から栄養分を吸収しながら盛んに細胞分裂を繰り返し、作られた毛を上に押し上げていきます。毛母細胞は角質化することで髪の毛を形成していきます。
角質化しなかった毛母細胞の一部は毛乳頭付近に残り、次の分裂に備えています。
成長期が続いている間は、このような細胞の活動が続くことで髪の毛が伸びていきます。
AGAはこの一連のヘアサイクルが乱れることで薄毛になる症状です。
DHTがAGAの一番の原因
男性の場合、精巣で作られたテストステロンと呼ばれる男性ホルモンが血液に乗って体中を巡回しているのですが、このテストステロンが前頭部や頭頂部に多く存在している5α還元酵素(5αリダクターゼ)と出会うことでDHT(ジヒドロテストステロン)という物質に変化します。
このDHTが毛球に悪栄養を及ぼします。DHTの作用によって、髪の毛が成長を続ける2~6年が終わるのを待たずに毛球が収縮を始めてしまうのです。
その結果、普通なら2~6年あるはずの成長期が数ヶ月~1年程度へ短縮してしまいます。
毛球が新しい髪の毛の組織を作らなくなるので、髪の毛が十分に成長せず、細く弱々しい毛の割合が増えていき(軟毛化)、数ヶ月~1年という短い期間の間に細い毛のまま抜け落ちます。
毛包も成長期に十分に成長できないまま、短期間で退行期・休止期へ移行してしまい、毛包が小さくなっていきます。
通常ならば1本の髪の毛は何年間も抜けずに成長し続け、十分に成長した後に抜け落ちるのですが、AGAではDHTの作用によって、新しく生えてきたまだ幼い毛が十分に成長する前に抜け落ちてしまいます。また新しく生えてきても同じように数カ月程度で抜け落ちてしまうので、ヘアサイクルの期間が短くなり、毛根の寿命も格段に短くなってしまいます。通常のヘアサクルが維持されているならば80歳になっても毛根は生きているのですが、AGAになると50歳を過ぎる頃から寿命が尽きた毛根がどんどん増えていきます。
寿命が尽きた毛根からはどんな治療を施しても2度と発毛しなくなるので、AGA治療はなるべく早く行う必要があるのです。
AGAになる人とならない人で個人差があるのは何故?
AGAになるのは遺伝的要因が強いという説が様々な研究を通じて有力となっています。
一方で、遺伝的要因があまりなくてもAGAが発症する人もいるので、遺伝的要因だけでなく後天的な要因(生活習慣など)の影響も大きいのではないかと推察されています。
現在では遺伝的要因は25%くらいで、生活習慣などの後天的要因が75%と言われています。
AGAの治療法
太古の昔から男性を悩ませて続けてきたAGAですが、近年の医学の進歩によりAGAに大変有効な治療法が確立されました。
極めて高い確率で発毛を成功させたり、薄毛の進行を止めることが可能となりました。
日本皮膚科学会が推奨するAGA治療法
AGA治療に関して、『公益社団法人 日本皮膚科学会』がガイドラインを発表しています。
ガイドラインでは医学的に発毛に効果のある方法や効果のない方法が明示されており、 日本皮膚科学会が強く推奨しているのはフィナステリドという内服薬とミノキシジルを含有した外用剤のみです。その他の方法では自毛植毛に効果を認めているのみです。
つまり2016年現在、医学的に効果が高いと認められているAGA治療法は、フィナステリド、ミノキシジル、自毛植毛のみということです。
ほとんどのAGAクリニックや皮膚科などの病院ではこのガイドラインに準拠したAGA治療を行っています。日本皮膚科学会の発表する治療法のガイドラインは、複数の専門家が数多くの臨床研究論文などを精査し医学的根拠(エビデンス)のある治療法を提示したもので、どの医師も専門家も認める非常に有用で説得力の高い文書です。
(参考)日本皮膚科学会 男性型脱毛症診療ガイドライン2010
AGA治療は時間との闘い
AGAの治療は、薄毛の進行がまだ進んでいない状態(症状が軽い)の患者の方が効果的が大きく出易く、薄毛が進行していくにつれて効果が小さくなっていきます。
これはヘアサイクルを40~50回行うと毛母細胞の寿命が尽きることに関係しています。
本来1回のサイクルに最短でも2~3年ほどあるはずの毛母細胞の寿命が、AGAを発症しサイクルが短くなると数ヶ月~1年で終わってしまうので、どんどん残りのヘアサイクルの回数が減っていってしまうからです。
毛母細胞は髪の毛を作っている大元の細胞なので、毛母細胞が死んでしまうとどんな治療をしても発毛することは不可能になります。
ですから、毛母細胞がまだヘアサイクルの余力を残している内にAGA治療を開始することが一番重要です。
AGA治療はできるだけ早く開始するべきだと言われるのはこのような理由があるからなのです。
見た目にはハゲてしまって毛がほとんど生えていないように見えても、毛母細胞が生きているなら発毛をさせることができます。
「自分もひょっとしてAGAの症状かな」と思ったら、できるだけ早く自己診断や検査をしすぐに治療を始めましょう。そうすれば、元通りの毛髪に戻せる可能性が高くなり、発毛後の髪の寿命もより長持ちさせることができます。
次のページでフィナステリドとミノキシジルは何故AGAに高い効果があるのか、治療に必要な費用などについて解説しています。
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