AGAと遺伝の関係 家族に薄毛の人がいたらハゲ予備軍
AGAと遺伝には関係があるのか? ここではそんな疑問に答えていきたいと思います。
「父親や祖父がハゲているから自分もハゲるんじゃないかな…」
「親戚が大勢集まると、どいつもこいつもハゲだらけだ」
「ハゲは遺伝するとよく聞くし、将来が心配だ」
そんな不安を抱えている方も多いと思います。
ハゲ家系と呼ばれるように、おじいさんがツルツルで、お父さんが薄毛、息子さんも生え際が上がっている・・・というような家族も見かけますね。
私も父親がハゲ家系で、さらに母方の祖父も禿ていたので、中学生くらいの頃から「いつか自分もオヤジたちのように禿るんじゃないか・・・」と不安でした。
まだまだモテたい時期だったこともあり将来が不安になりました。生まれつき髪質が太いので学生時代は周りの友達からは「お前は全然大丈夫だよ」と言われていましたが、全く安心はできませんでした。
そしてその不安は10数年後、現実のものとなったわけです。
実際にあった話ですが、全く違う生活環境にいた一卵性双生児の双子がほぼ同じタイミングでAGAを発症したことが報告されています。
食生活やストレスのかかる環境が全く違っていても、遺伝子が非常に近い2人が同じタイミングでAGAを発症した例です。これはAGAに遺伝が関係していることを強く疑わせる例だと考えられます。
実際のところ医学的にはAGAは遺伝すると証明されているのでしょうか?
結論から言うと、
医学的にはAGAの発症に遺伝子が関与していることが分かっています。
特に近年研究が進み、発症原因だと推察されるいくつかの遺伝子変異が確認されています。
どんな風に関与するのか、どの程度遺伝が影響するのかなど、ここから詳しく解説していきます。
AGAと遺伝のメカニズム
ここからはちょっと読むのが億劫になるお話になりますが、お付き合いください。
AGAになる原因はDHT(ジヒドロテストステロン)の働きによるものです。DHTは全身の血中を流れる男性ホルモン(テストステロン)が5α還元酵素(5α-リダクターゼ)によって変化したものです。
5α還元酵素(特に5α還元酵素Ⅱ型)は前頭部や頭頂部に多く存在するので、5α還元酵素が多く存在する場所でDHTも多く発生することになります。前頭部や頭頂部にDHTが多くなるのでM字型やO字型の薄毛になるわけです。
DHTを受け取る受容体のことを男性ホルモン受容体(アンドロゲンレセプター)と言い、DHTが男性ホルモン受容体と結合することでTGF-βと呼ばれる成長抑制因子になり、TGF-βが毛乳頭に成長を抑制する指令を出すことでヘアサイクルを乱し薄毛になります。
個人差があるのは、5α還元酵素の活性力の高さと男性ホルモン受容体の感受性の高さです。
5α還元酵素Ⅱ型の活性力が高い人は、DHTが多く作られるので薄毛になりやくなります。
男性ホルモン受容体の感受性が高い人は、DHTの影響を受けやすいので薄毛になりやすくなります。感受性が高いというのは、男性ホルモン受容体の数が多いと言い換えられます。
男性ホルモン受容体の数は母方からの遺伝
人にはX染色体とY染色体という2つの型の遺伝子があるのですが、男性はXとY両方の染色体を持っており、女性はX染色体のみでY染色体は持っていません。
男性はY染色体を父親から、X染色体を母親から受け継ぎます。
男性ホルモン受容体の量を決める遺伝子が存在しているのはX染色体です。
つまり薄毛になりやすいかどうかを決める遺伝子は母親から受け継ぐのです。
母親は女性なので女性ホルモンの影響が大きくAGAを発症する遺伝子を持っていても男性のように薄くなることはほぼありません。
図の場合ですと、母方の祖父は薄毛遺伝子を持っていないのでフサフサです。
母方の祖母は薄毛遺伝子を持っていますが、女性ですので見た目に薄毛になることはあまりありません。年齢によっては多少が影響があるかもしれませんが。
母親は祖母から薄毛遺伝子を受け継いでいますが、やはり女性ですので薄毛にはあまりなりません。
父親は薄毛の遺伝とは関係のないY染色体にしか関係ないので、禿ていてもフサフサでも孫には全く影響しません。
そして孫の2人ですが、兄は祖母が持っていた薄毛遺伝子があるX染色体を受け継いだので薄毛になる可能性が大きいです。
弟は運良く薄毛遺伝子のないX染色体を受け継ぐことができたので薄毛になる可能性が兄より低くなります。
もし祖父が薄毛だった場合は、見た目には母方の祖父からの隔世遺伝という形になります。
母方の祖父が薄毛の場合は、孫の男性も薄毛になる確率が高くなるということですね。
5α還元酵素の活性力の高さは父方母方どちらからも優性遺伝する
でも逆に、父方の家系に薄毛の人がいても遺伝的には全く気にすることはないですね。
と言いたいところですが、残念なお知らせがあります。
実は父親から受け継ぐ可能性がある薄毛遺伝子もあるのです。
それは、5α還元酵素の活性力です。
5α還元酵素の活性力が高いとDHTが多く作られるので薄毛になりやすいのですが、この活性力の高い遺伝子は優性遺伝なのです。
どういうことかというと、父親と母親のどちらかが5α還元酵素の活性力の低い遺伝子を持っていても、もう一方が高い遺伝子を持っていた場合、子供は高い方を遺伝してしまうということです。
ですから、父親が薄毛だった場合も子供が薄毛になる可能性が高くなってしまいます。
また、多因子遺伝と言って、遺伝子のいくつかの種類を組み合わせるとAGAを発症すると言われているので、両親や祖父母にAGAの症状が見られなくても本人に症状が出ることもあります。
「結局、家族に薄毛の人がいなくても禿る可能性があるってことじゃん」と思われるかもれしませんが、確率的には母方の家族から遺伝する傾向が強いです。
遺伝だけがAGAの原因ではない
ここまでのお話で、
①母方の家族に薄毛の人が多いと、子供にも遺伝する可能性が高い
②父親が薄毛だと、子供にも遺伝する可能性が高い
ということが分かりました。
以上の遺伝的要因を裏付ける話として、次のような実験結果があります。
ハミルトン博士の実験によると「家系にAGAの人がいない去勢した男性たち」にどれだけ男性ホルモン注射をしても禿げませんでした。逆に「家系にAGAの人がいる去勢した男性たち」にも男性ホルモン注射をしたのですが、全員AGAを発症しました。つまり、男性ホルモンがいくら増えても禿げない人がいる一方、男性ホルモンが増えることで禿げる人がいることが分かりました。これは遺伝に関係すると考えられるのです。
ここまで薄毛の家族がいる人には残酷な話が続きましたが、遺伝を考える上でもうひとつ重要な点があります。
実は遺伝だけが薄毛になる決定的な要因だとは言えないのです。
現在の医学では、通常の生活をしていれば遺伝が薄毛の要因になる割合は25%程度だと言われています。
父親や母方の祖父が薄毛だからと言って、薄毛に絶対になるわけではないということです。
残り75%の要因は、生活習慣やストレスなどと言われています。これは男性ホルモンを微量しか分泌していない女性でも薄毛になることがあることからも明らかですね。
しかし、詳細についてはまだ学術的に証明がされるまでには至っていません。
現在の医学ではまだ分からないことが多いものの、生活習慣に意識を向けることでAGAの発症リスクを抑えられる可能性があります。
遺伝子検査で自分のことを知る
遺伝子検査でAGA治療薬のフィナステリドの効き易さを知ることができます。これからAGA治療をしようと思っている方は一度試してみてもいいかもしれませんね。
⇒ AGA遺伝子検査で何が分かる? どこで受けるのか、費用は?
髪の毛で遺伝するのはハゲだけではない
意外と知られていないことですが、親がクセ毛の場合、子供もクセ毛になる確率は7割というデータがあります。
日本人の遺伝子はモンゴロイド系と弥生系が何十世代も混ざり合ってできたものすが、モンゴロイド系がクセ毛で弥生系が直毛で、クセ毛の方が優性遺伝するので、現在では日本人の9割が大なり小なりクセ毛を持っているそうです。
まとめ
AGAと遺伝の関係について見てきました。
様々な研究からAGAが遺伝するということが分かっています。一方で、遺伝以外の要因が非常に大きいことも最近の研究では示唆されています。
家族に薄毛の人がいる男性は、今は薄毛になっていなくても将来薄毛になるリスクが高いと覚悟しておきましょう。
家族に薄毛の人がいない男性も油断はできません。薄毛の要因となりうる不健康な生活を長年続けているとAGAを発症する可能性が高まります。
家族に薄毛の人がいるいないに限らず、髪の健康を保つ生活を心掛けることで将来の薄毛リスクを低減させることができます。
AGAは発症したらすぐに正しい治療すれば高い確率で元通りの髪の毛を取り戻すことができます。
今は薄毛になっていなくても、将来の発症した時のためにAGA治療の知識を持っておきましょう。
生活習慣を見直すことで将来のAGAの発症リスクを小さくすることができると考えられています。
理想的な頭皮環境を作ってAGA予防をしましょう。